
「消防訓練?毎年やってるし、なんとなく知ってるよ」
そう思っている方も多いのではないでしょうか?
でも実は「知ってるつもり」で終わってしまっている人が多いのも消防訓練の特徴。
この記事では、消防設備士の視点から、消防訓練の目的・種類・よくある落とし穴まで、分かりやすく深掘りして解説していきます!
消防訓練はなぜやるの?
『そんなこと知ってるよ』というのが本音だと存じますが、少し解説させてください。
消防訓練は、火災や地震などの非常時に「命を守る行動」を身につけるための訓練です。
- 火災発見→通報→初期消火→避難誘導 という一連の流れを体で覚える
- 非常ベルや放送設備の実際の使い方を学ぶ
- 自分がどの役割を担うのかを確認する
など、単なる「避難ごっこ」ではないんです。
小学校や中学校の時に気づいた頃にやってきて、少しだけワクワクしたあの感じを覚えていますが、軽率だったなと反省しています。
消防訓練には種類がある!
消防訓練にはいくつかの種類があります。それぞれ目的が違います。
- 🔥 避難訓練:利用者や職員がスムーズに避難するための訓練
避難することを目的に行う訓練です。避難経路の確認、収容人数の確認、集合場所の確認などを再確認し、最善の避難方法を検討します。
- 🚨 通報訓練:119番通報の手順や伝えるべき情報を確認
建物で火災が発生した際は、すぐに通報しましょう。
突然の火災に驚いて、正しい建物の情報を伝えられないかもしれませんので、訓練で少しでも慣れておくことが重要です。
119番で通報後、消防署の通信指令室に繋がります。
建物の住所・出火場所・出火原因・建物にいる人数など、質問されます。
落ち着いて、情報を伝えましょう。なかなか難しいかもしれませんが、通信指令室の消防官もプロです。まずは、聞かれたことに答えるだけでも十分ですので、チャレンジしてみても良いかもしれません。
- 🧯 消火訓練:消火器などを使って初期の火を消す訓練
消火器は建物の様々な場所に設置されています。どこに消火器が設置されているか、消火器を使えるか、確認しましょう。
消火器の使い方を実践的に知りたい場合は消防署から「水消火器」を借りられるので、最寄りの消防署に問い合わせてみると良いかもしれません。
- 🚒 総合訓練:上記すべて+消防署の立ち会いでより実戦的に
避難訓練・通報訓練・消火訓練を合わせた総合的な訓練になります。
ここで重要なのは、すべてを1人に任せるのではなく、役割分担を行うことです。
すべてが出来るようになれば、それに越したことはありませんが、どれも優先順位は高いです。これを素早くできるかが、生存率に繋がってきますので、土壇場で決めるのではなく、訓練で自分の役割を明確にしていきましょう。
建物の種類や規模によって、法律で義務付けられている内容も異なります。
避難時に「口と鼻を覆う」「姿勢を低くする」本当の理由
火災時に「口と鼻をタオルで覆う」「姿勢を低くして避難する」といった指示を聞いたことがあると思います。
これらの行動には、明確な理由があります。
それは「煙から逃げるため」です。
- 【煙の中に潜む「見えない脅威」とは?】
火災時に発生する煙には、目に見えない危険物質が多く含まれています。
その中でも特に注意が必要なのが「一酸化炭素」です。
一酸化炭素は無色・無臭で、自覚症状が出たときには手遅れになることもあります。
- 【一酸化炭素中毒のメカニズム】
私たちの血液中のヘモグロビンは、本来、酸素を全身に運ぶ働きをしています。
ところが、このヘモグロビンは酸素の約250倍もの強さで一酸化炭素と結びつく性質を持っています。
そのため、呼吸によって体内に取り込まれた一酸化炭素がヘモグロビンと結びつき、酸素が行き渡らなくなってしまいます。
頭痛、めまいに始まり、意識消失、最悪の場合は死に至ります。
- 【火災の死亡原因の多くは「煙」】
火災による死亡原因の中で最も多いのは「火傷」ですが、次いで多いのが「一酸化炭素中毒」です。煙の恐ろしさを甘く見てはいけません。
【どうすれば煙から身を守れるのか?】
- 口と鼻をタオルで覆う理由
→ 煙を吸い込まないため。できれば濡れたタオルが効果的です。
- 姿勢を低くする理由
→ 煙は上に向かって溜まっていく性質があるため、床に近いほど空気が比較的きれいです。
これらの行動が「命を守るための基本動作」なのです。
【避難時に重要なポイント】
火災発生後、初期消火ができなかった場合は次の対応が重要です。
- ドアを閉めて煙の拡散を防ぐ
- 排煙窓があれば開けて外に煙を逃がす
- 避難は火元に近い場所から誘導する
- とにかく煙から逃げる意識を持つ
煙の動きや性質を理解して行動することで、生存率を大きく高めることができます。
「煙から逃げる」という意識を持つだけで、避難時の行動は大きく変わります。
その一歩一歩が、あなた自身や周囲の命を守ることにつながるのです。
訓練を意味あるものにするコツ
- 実際の設備(非常放送・消火器など)を使ってみる
消火器の使い方は「水消火器」を使用します。消防署でも借りられることもあるので、最寄りの消防署に問い合わせてみてください。
機械系の設備で言えば、自動火災報知設備、火災通報装置、消火栓など、これらの設備は契約されている消防設備会社の方に聞いてみてはいかがでしょうか。
- 火災の時間帯・場所を変えて実施する(夜間想定など)
様々な状況を想定することで、その想定が外れていたとしても、多くの気づきや改善策が見えてきます。病院、老人保健施設の場合の夜間想定の訓練は人員が少ない中での訓練となり、そこをどのように改善するのかを実践の中で見つけることができます。
- 訓練後に「反省会」をして気づきを共有する
反省会で得られる情報を少ないようで、意外とあったりするものです。
突拍子もないところから、思わぬアイデアや、隠れていた問題が出てくるので、フィードバックは重要です。
「訓練をやったこと」ではなく「どうすればよかったか」が大事になります。
訓練を「こなす」から「活かす」へ
消防訓練は、建物の安全を守るための「命の予行演習」
やり方次第で、その効果は大きく変わります。
「知ってるつもり」で終わらせず、いざという時に役立つ消防訓練を目指しましょう!