当社では、消防設備点検でマンションにお伺いすることがあります。
マンションの点検では、各居室に「避難はしご」があり、点検をさせていただきます。
避難はしごが設置されている部屋と設置されていない部屋があります。
先日、設置されていないお部屋のお客様から『私の部屋ははしごがないけど、避難の時は大丈夫なの?』とお話を頂戴しました。
結論、隣のお部屋のベランダの避難はしごを使って避難することが可能です。
今回は、頂いた質問を基に、解説していきます。
二方向避難の考え方
マンションなどの一定規模以上の集合住宅を建てる際に、「二方向避難」の原則の基、設計されています。
二方向避難とは、自分のいる部屋から避難階または地上に通ずる出口が2つ以上あるようにする建築基準法のルールになります。マンションにお住いの方であれば、2つ以上の非常用階段が設置されていると存じます。
二方向避難の考え方は、1つの避難経路しかない場合、そこが火災により封鎖されると逃げることが出来なくなります。そのため、2つ以上の避難経路があれば、1つが火災などにより封鎖されても、もう1つの経路から逃げることが可能です。
例えば、お部屋の出入り口が火災により封鎖された場合を想定しましょう。
避難に使える非常用階段までの道が封鎖されてますから、避難が不可能になると考えるでしょう。
この場合は、ベランダに設置された避難はしごを用いて避難しましょう。
避難はしごも二方向避難の考え方に基づいて、設置されているため、意図的に避難経路を塞がない限り、基本的には1つ以上の避難経路は確保されるはずなので、この考え方はとても有効です。
一方で、私が住人の方から質問を頂いたように避難はしごがないお部屋もあります。そういった場合は、避難はしごがある隣のお部屋のベランダから避難しましょう。
『勝手によその家のベランダに入っていいのか?』と思われるかもしれません。
自分の部屋に面しているため、自分専用のスペースと捉えられがちですが、実はベランダは消防法では「共用部分」に定められています。
そのため、「ガーデニング」「椅子・机の設置」が避難の妨げとなる状態は、消防法では禁止されています。
避難はしごが設置されている住人の方は、いつでも使用できるように、ベランダを整理しておくことが必要です。
隔て板ってなに?
隣のベランダの境界には「非常の際には、ここを破って隣戸へ避難出来ます。」などと書かれた壁があるかと存じます。
これは「隔て板」と言って、この壁を破ることで避難することが可能となります。少し叩いたくらいでは壊れず、足のかかとで壁の中央部分を蹴ると壊れやすいです。
隔て板の破り方はこちらの動画をご参考にしてみてください。
緊急の場合には、躊躇せずに隣のベランダから避難させてもらいましょう。
以上の点から、どのお部屋からでも避難できることがお分かりいただけたことと存じます。
建物で火災が発生した際には、どのルートから避難が可能かを確認しておくことがとても重要です。
ご参考にしていただければ、幸いです。